
子どもの頃の心的外傷体験(身体的/性的虐待など)は、大人になったときの精神障害と関係しています。この調査ではベトナム戦争で戦ったアメリカ人兵士の、子どもの頃の虐待被害とPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状との関連について調べました。
協力してくれたのは、PTSDの治療を希望している元兵士38人と、PTSDの症状がない元兵士28人です。
その結果、虐待体験がある人で26%、虐待体験がない人で7%の割合でPTSDの症状があることがわかりました。また、PTSDのある人は入隊する以前にもPTSDの症状が現れたことがある割合がかなり高いことがわかりました。
抄訳した論文の原題:Childhood physical abuse and combat-related posttraumatic stress disorder in Vietnam veterans
▼荒川コメント
- 別の研究では、以前にPTSDを引き起こしていることで再度PTSDを引き起こすリスクが高いことが分かっています。過去に受けた虐待が心的外傷体験になってしまっている場合、戦場での体験によってPTSDになるリスクが高まってしまいます。
- このことをふまえると、例えば消防官が職場で上官からいじめや暴力を受けることがあった場合、救助活動を行う際のパフォーマンスを下げてしまう恐れがあると言えるのではないか、と推測します。そうなったら、消防官本人の安全や健康が冒されるだけでなく、助かる人も助からなくなってしまう危険性があります。
- 例えば、3.11の時に自分の命の危険をかえりみず救助活動に当たった隊員が大勢いらっしゃいます。そのような活動をしてくださる方がいらっしゃるから、私たちの安全な生活が保障されます。そのような隊員の方々を私たち一般人の側から何か助けることができるとすれば、「虐待のない世界を作り、PTSDにかかりにくくすること」ができるでしょう。
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