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覚せい剤と同じ成分のADHDの薬を安全に飲んでいる子どもは66%(アメリカ)

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アメリカで4〜17歳の子どもを対象にした調査では、410万人(子ども全体の7.2%)の子どもがADHDと診断されています。そのうちの270万人(ADHDの子どもの66.3%)が服薬治療をしていることがわかりました2007〜2008年の調査)用いられる薬はアンフェタミン(日本では不認可)、メチルフェニデート(商品名:コンサータ、リタリンなど)があります。 

 

この記事の目的は「薬に関連することがらの情報提供」であって「服薬以外のやり方の否定」ではありません。そのことをふまえて読み進めてください。

 

目次

  1. 服薬しているADHDの人の割合
  2. 薬の副作用はないのか?
  3. 存在が否定されている副作用
  4. 薬物の乱用の危険性はないのか?
  5. なぜ薬物やアルコールの乱用の危険性が下がるのか?
  6. 薬の利用をどう判断するか?
  7. 薬にまつわる別の問題

 

服薬しているADHDの人の割合

上記のデータを年齢と性別ごとにグラフにすると以下のようになります。服薬していることを示す濃い青で示された領域が3分の2の割合を占めています。

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少し古い2003年にアメリカで行われた調査では、4〜17歳の子どもの440万人がADHD(注意欠陥多動性障害)と診断され、250万人(56%)が服薬治療を行っています。調査によって割合は異なります。

抄訳した論文の原題:

Mental health in the United States. Prevalence of diagnosis and medication treatment for attention-deficit/hyperactivity disorder--United States, 2003

Preventing Chronic Disease | State-Based and Demographic Variation in Parent-Reported Medication Rates for Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder, 2007–2008 - CDC

 

 

薬の副作用はないのか?

副作用として、血圧や心泊数の増加、体温の上昇、眠れなくなる、食欲が減るというものがあります。副作用の重さは人によって異なるようです。用いる薬は子どもによって異なりますし、子どもの体質によって副作用の種類、程度が異なるようですから医師に確認しましょう服薬した最初のころに現れてその後なくなる副作用もあるようです。

また、長期間使うことによって薬に対する耐性がつくため、薬を使う量を徐々に増加させる必要が生じます

メチルフェニデート:ADHD児への使用と問題点」では、メチルフェニデートに関する問題が指摘されており参考になります。

 

 

存在が否定されている副作用

低体重低身長

服薬すると低体重低身長になるという説がありましたが、これを否定する事実が明らかになっています。一時的に体重と身長の増加がしにくくなることがありますが、その後、リバウンドして再び増加するようになるという調査があります。また別の調査では、体重と身長への影響はないという結果が出たこともあります。 

 

薬を飲むことによる自尊心の低下(スティグマ)

薬を服用することによって「自分は病気なんだ」などとネガティブに考えさせてしまうようになるという考え方があるようです。ですが実際には、服薬することによって結果的に自尊心が高まっています(後述)。

日頃からよほど「薬を飲むことは悪いことだ」ということを言い聞かせていない限り、薬を飲むことに対するスティグマ(負の烙印)や忌避感は少ないと私は考えています。(薬に限らず、「特別な支援」というものに関しても同様です。日頃から特別支援を「負け犬のための教育」として話していると「支援を受けること=スティグマ」となってしまいます。)

抄訳した論文の原題:Long-Term Treatment of Children and Adolescents with Attention-Deficit/ Hyperactivity Disorder (ADHD).(page 404: Summary of long-term stimulant treatment)

 

乱用の危険性 

ADHDの治療のために少量から使っていても、乱用の危険性が高まると考えられていました。ですが、数多くの調査によって乱用の危険性は否定されています。以下で詳述。

 

 

薬物の乱用の危険性はないのか?

結論から言うと、服薬治療によって薬物乱用の危険性は「下がります」。上がるのではなく、下がるんです。ADHDの治療薬は覚醒剤と同じ成分であることが知られています。そのため投薬を行う子どもの親御さんは薬物乱用の危険性を非常に心配します。

薬物乱用について調べた調査は数多くあります。例えばADHDの診断を受けた13〜19歳で、4年以上の投薬治療をした674人と薬を使っていない360人のを比較した調査があります。結果は、投薬治療をしている人の方が薬物やアルコールの乱用が少ないことがわかりました(z = 2.1; 95% confidence interval for odds ratio [OR]: 1.1–3.6)

では、どのような誤った使い方をすると乱用の危険性が増加するのでしょうか?例えば、医師の処方に従わずに一度にたくさんの錠剤を飲む(オーバードーズ)ケースでは乱用の危険性が増加します。ストレスが非常に強い状態に置かれている人が、衝動的にオーバードーズを起こしてしまうことがあります。そのため、オーバードーズなどの危険がないように医師は問診しながら適切な処方を行うことになっています。

抄訳した論文の原題:

Does Stimulant Therapy of Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder Beget Later Substance Abuse? A Meta-analytic Review of the Literature

DrugFacts: Stimulant ADHD Medications - Methylphenidate and Amphetamines

 

 

なぜ薬物やアルコールの乱用の危険性が下がるのか?

投薬治療を行っているADHDの子どもと投薬治療をしていないADHDの子どもを比較すると次のような違いがあることが分かっています。 服薬によって以下の点に違いが生じ、結果的に薬物やアルコールの乱用が起こりにくくなるという理路です。

学業成績が上がる/仕事がうまくできる

投薬治療によって注意の散漫さが軽減し、勉強に集中して取り組めるようになります。集中しやすくなることによって、結果的に学業成績が上がる結果となります。

仕事についても同様です。注意の散漫さが軽減することによって、不注意によるミスが減ります。ミスが減ることによって仕事の能率が高まります。

 

社会性が高まる

投薬治療によって、衝動性が減少します。衝動性とは「あとさき考えずに行動する」ことや、怒りっぽいことです。このような衝動性が減少することによって、家族や学校の同級生や先生と衝突することが起こりにくくなります

 

自尊心が高い

仕事や学業成績の向上、社会性の増加によって、自尊心(早期不適応的スキーマ)が高まります。自尊心とは「他の人と同様に、自分には価値がある」という無意識の思考のことです。自尊心が適切な範囲に保たれることによって、日々を幸せな気持ちで活動的に過ごすことができるようになります。

逆に自尊心が低下すると、攻撃性や薬物やアルコールの乱用、うつ病の症状が増加します。自閉症スペクトラム障害とADHDの成人において、うつ病のある人が全体の50%程度とする調査もあります。このことからも、自尊心を保つことは非常に大切なことであると言えます。

抄訳した論文の原題:

Long-Term Treatment of Children and Adolescents with Attention-Deficit/ Hyperactivity Disorder (ADHD).(page 404: Summary of long-term stimulant treatment)

Cognitive representations in alcohol and opiate abuse: The role of core beliefs

 

 

薬の利用をどう判断するか?

最終的には親御さんや当事者ご本人が決めることだとふまえた上で、私の考えを述べます。

私は次の2点を天秤にかけて考える必要があると認識しています。

  • 薬を飲まないことによって生じる失敗体験。それに伴って起きる自尊心の低下と、自尊心の低下によって生じるうつ病のリスク。発達障害のある大人でうつ病の人は50%というデータ。
  • 薬の副作用のリスク:血圧や心泊数の増加、体温の上昇、眠れなくなる、食欲が減る、など。

メチルフェニデート:ADHD児への使用と問題点」ではさまざまなリスクが指摘されていますが、うつ病とうつ病による自殺ほどは多くの人に深刻な症状をもたらすものではない、というのが現時点での私の結論です。今後、別の知見が得られることによってこの結論が変わる可能性はあります。

 

 

薬にまつわる別の問題

薬に関連する問題はさまざまにあり、問題を複雑にしています。例えば。

  • ADHDの誤診:ADHDではない人がADHDと診断されて薬を飲んでいるという問題
  • 製薬会社の経営に対する陰謀論:利益を上げるために、過剰に投薬させているという説
  • 薬(「自然」ではないもの)に対する根強い忌避感:天然や自然なものが良く、人工的なものは悪いという価値観
  • 「服薬以外にもやり方はある」という反論:その通りだと思いますし、現に私自身も家庭でペアレント・トレーニングを行っています。私の目的は「薬の利用を迷っている方への情報提供」であって「薬以外のやり方の否定」ではありません。

私の立場としては、いろいろと存在している問題とは切り分けて、「薬は発達障害の人の幸福感に対して、どのような貢献をするか?」というテーマを、エビデンスにもとづいて議論したいと考えています。

 

追記:注意! 

  • 発達障害に対するあらゆる教育や薬剤は「自尊心を保つこと」を目的の一つにして行われるべきです。これを別の言い方をすると、すでに環境に適応できて自尊心が保たれる状態になっているのであれば服薬する必要はないと言えます。
  • 定義上、覚せい剤に分類される化学物質には、多くの人にとって身近なものも含まれています。例えば、タバコに含まれるニコチン、お茶やコーヒーに含まれるカフェインは、分類的には覚せい剤です(出典:Wikipedia)。「覚せい剤」という用語が悪いニュースとあまりにもセットで報道され過ぎる現状があり、「覚せい剤」という言葉に悪いイメージが貼り付いてしまっているようです。
  • 英語ではADHDの服薬治療をStimulant Medicationと表現することがあります。Stimulantは、覚せい剤、興奮剤、刺激薬の意味です。Medicationは投薬治療の意味です。

 

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photo credit: higlu via photopin cc