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個性を自立力にするために興味を広げるべし

個性を自立力にするための子育てや教育のやり方について発信しています。発達障害の成人向けの話題も発信してます。クエストスクール代表荒川の個人ブログ

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・【随時更新】これまでに読んできた子育てや発達障害の周辺の本20冊以上
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お小遣いの与え方によって、子どものやる気はどう変わるのか?

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私が子どもの頃、荒川家には毎月1日になると決まった額のお小遣いがもらえるというルールがありました。恐らく多くの家庭でこの月給制を採用していたのではないかと想像しています(多くの親が月給制で給料をもらっているのですから、子どもにも同じルールが適用されやすいでしょう)。このやり方を「月給制お小遣い」と呼ぶことにします。

今回はお小遣いに関する今までの慣習を一旦忘れて、子どもに対する教育効果を高めるための「歩合制お小遣い」について考えてみましょう

 

 

▼歩合制と月給制のお小遣いの違い

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最初に一般的なやり方である月給制お小遣いのあげ方と、私が考える歩合制お小遣いがどのような点で異なっているのかを確認します。

月給制お小遣い

最初に、一般的な月給制お小遣いのあげ方がどのようなものなのか確認します。月給制お小遣いは以下のような条件で与えられています。

  1. いつ?:毎月決まった日に
  2. 何回?:月に一度だけ
  3. いくら?:年齢に相応と考えられている金額を与える

そしてこのような月給制お小遣いのもらい方を通して子どもが学ぶことは、「もらえる時期が来るまでじっとガマンする」という受動的な態度であると言えます。

月給制の良い点は、もらえる最低限の額が決まっていることです。逆に悪い点は、「努力してもしなくても得られる報酬は同じ。であれば、なるべく何もしない方が得」という発想を身につけやすいことです。

 

歩合制お小遣い

私が考える歩合制お小遣いにおいて、子どもにお小遣いを与える条件は以下のようになります。

  1. いつ?:お手伝いや学びを終えた後、なるべく早く
  2. 何回?:お手伝いや学びを終えるたびに。もしくは1日1回(食器を洗った後にもらい、本を読んだ後にももらう。もしくはまとめて夜にもらう)
  3. いくら?:一つのお手伝いや学びに相応な金額を与える(読書1ページ1円、食器洗い50円など)

このようなお小遣いのもらい方を通して子どもが学ぶことは、「権利や自由を得るために義務を果たす」という能動的な態度であると言えます。

ここでいう権利や自由とは、欲しいものを得たりしたいことをすることです。また義務とは、家事のお手伝いや勉強など「やった方がいいことは分かっているけど、あまり気が乗らないこと」をこの記事の中では意味します。

歩合制の良い点は、「なるべくいろいろなことをやった方が得だ」という発想を身につけやすいことです。悪い点を強いて挙げると、親からするとその都度お小遣いを渡すのが面倒ということがあるでしょう。

歩合制お小遣いのこのような性質は、私が開発している子育てメタ理論が目指している「健全な人権意識」「チャレンジ精神/探究心」の育成にも役立つものだと言えます※。

※子育てメタ理論について:子どもが生まれてから自立するまで使える子育てメタ理論とは?

 

 

▼やる気のメカニズム

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ここで、やる気(ここでは動機、モチベーションも同じ意味です)を効果的に引き出すためのポイントについて簡単に解説します。

  1. いつ?:何かをやり遂げた直後に報酬(褒められること、モノ、お金など)があることが分かっている方が、やる気が出やすい。逆に、報酬が与えられるのが1週間後や1ヶ月後となると、やる気は生じにくい。
  2. 何回?:何かをやり遂げた後に毎回、報酬があることがわかっている方が、やる気が出やすい(行動が定着しやすい)。逆に、報酬があることが十回に一回というような時々の場合にはやる気は生じにくい。
  3. いくら?:報酬の大きさや種類や金額が適切である方が、やる気が出やすい。逆にやる気が生じにくい例は、普段から欲しいものが好きなだけ与えられている状況にあること。したがって、おもちゃやお菓子やお金に関しては適度な欲求不満があることが望ましい。

以上の3つのポイントを取り入れたのが歩合制お小遣いです。企業での給与制度で、定額制と歩合制ではどちらがやる気を引き出しやすいか考えると分かりやすいでしょう。

なお、お小遣いをいくら与えるかという点に関しては、それぞれの家庭の家計を考慮して、子どもに渡すことができる範囲内で行う必要があります。一つのことを終えるごとに数円〜数百円と考えて、1ヶ月でどの程度の額になるのか事前に確認しておくと親には安心です。

 

やる気に関する研究

ここで、やる気と報酬に関する海外の研究について紹介します。

この研究では8〜12歳の子どもに対して以下の4種類の報酬を与えて、実験課題の点数にどのような違いが出るのかについて調べました。

  1. 子どもに笑顔を向ける 
  2. 子どもにお金を与える 
  3. 子どもに笑顔を向ける+お金も与える 
  4. 笑顔もお金も与えない

 笑顔は報酬として働きます。笑顔というものは「社会的報酬」と呼ぶことができます。社会的報酬とは、「周囲から笑顔を向けられる」「褒められる」のような種類の報酬を指します。

実験の結果、1〜3の報酬を得た子ども(4以外の子ども)は課題の成績が良くなることがわかりました。また、お金が報酬に含まれている2と3の子どもの成績が特に高いようです。このことから、笑顔(社会的報酬)よりもお金による報酬の方が報酬としての力が大きい(強化力が高い)ようです。

社会的報酬には別の効果もあることが分かりました。社会的報酬を得ることによって、他者への共感性が高まるようです。

このことから、社会的報酬(笑顔を見せる、褒めるなど)とお金(またはトークンエコノミーによるシールなど)を組み合わせて報酬を与えることによって、動機付けと共感性の両方を高めることができると言えるでしょう。

また自閉症スペクトラム障害やADHD(注意欠陥多動性障害)の子どもに対する報酬についても考える必要があります。どちらの発達障害も、言葉よりもお金やお菓子やシール(トークンエコノミー)などの目に見える報酬に対しての反応が良いようです。子どもの特性を考慮に入れて報酬を用いるという視点も大切です。

※参考にした論文の原題:Differential effects of social and non-social reward on response inhibition in children and adolescents

※お金についてまだよくわからない幼児向けにはトークンエコノミー(ごほうびシール)と言うやり方があります。発達障害の有無に関係なく有用な手法です。ADHDの子の教育に不可欠なトークンエコノミーのやり方

 

 

▼よくある反論とそれに対する回答

お金の話をしたときによく生じる反論は以下のようなものがあります。

Q. お金が欲しいという不純な動機で子どもに何かをするようにしむけると、お金でつられないと何もできない人間になってしまうのでは?

心理学ではこの説は否定されています。具体的な動機付けの仕組みは次のようなものです。

最初はお金につられて行動しますが、繰り返し行動することによって徐々に自分の中から生じる動機付けによって行動するようになっていきます。また、報酬があるかどうかわからない状況でも行動できるようになっていきます。

このような現象を心理学では「外発的動機付けから内発的動機付けに移行する」と表現します。つまり、自分の外から動機付けされる状態から、自分の内側からの動機付けによって行動するようになるということです。

また、行動が起こりやすくなるもう一つの側面としては、日頃からやり慣れているので行動を起こしやすいこともあげられます。これを心理学では「反応努力が少なく済む」と表現します。

 

やる気が外発的から内発的になっていく例①

高校生や大学生になると、お金を稼ぐためにバイトをするようになります。また、学校を卒業した後はお金を稼ぐために仕事をするようになります。どちらにしても、最初の動機はお金を稼ぐことです。

ですが実際に仕事を始めれば単にお金のためだけに仕事をするのではなく、責任感や仕事の楽しさという内発的動機付けが生じるようになることを多くの方が経験しているでしょう。「お金を稼ぐ必要があるし、責任もあるし」という複数の動機付けを持って行動するのが人間なのです。

このように自分自身の実体験からも、外発的動機付けから内発的動機付けへの移行が起こることを理解することができるはずです。

 

やる気が外発的から内発的になっていく例②

外発的動機付けから内発的動機付けに移行していることが分かりやすい人物の例は、バスケットボールマンガの金字塔「スラムダンク」の主人公の桜木花道です。

桜木はバスケの経験が皆無の高校生でしたが、バスケ好きな春子さんの気を引くためにバスケを始めます。異性の目を引くという「不純な」動機でバスケを始めた桜木でしたが、徐々にバスケそのものの面白さに気付いて練習に打ち込んでいく、というストーリーです。外発的動機付けの種類がお金か異性かという違いはありますが、動機付けが外発から内発に変わっていくという点では同じ現象です。

以上のことをふまえると、最初の動機の純粋さよりも、とにかくやり始めることが大事だと言えるでしょう。何かをとにかくやり始めるというときに、お小遣いは最初のスタートを切るための助けになります。

また、強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話の内容にも、外発的動機付けから内発的動機付けに移行していく様子が見て取ることができます。

 

 

▼歩合制お小遣いを利用した「お手伝い」

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ここまでに歩合制お小遣いの働きとやる気の仕組みについて説明してきました。ここからは歩合制お小遣いを用いて、子どもに家事のお手伝いをするように促していくことがどのような教育的意義のあることなのかについて考えてみます。お手伝いの教育効果とは、、、

  1. 自立のために必要なスキルを身につける
  2. 家の中で誰かの役に立つ経験を得る
  3. 家の外でお金を稼ぐ力の土台となる

このような効果があることを考慮に入れて、歩合制お小遣いとお手伝いを組み合わせて利用してみてください。

1. 自立のために必要なスキルを身につける

大学に入って一人暮らしを始める学生は大勢います。一人暮らしをスタートするにあたって必要な家事を経験しておくことは貴重な財産になります。家事をやった経験がない学生(特に男子)の一人暮らしの部屋がどれだけ悲惨なことになるかご存じの方も多いはずです。私の時もそうでした。。。

 

2. 家の中で誰かの役に立つ経験を得る

自分が何かを行い、それに対して感謝されるという経験はとても大切です。このような経験を通して、人に感謝されることのうれしさや、人のために何かをすることの大切さについて実感していくことになります。あらゆる仕事の究極の目的が「他者の幸福を増やすこと」にあるとすれば、家庭内でも同質の経験ができることの教育的意義は大きいでしょう。

また、勉強や人付き合いがうまくできなくて自分に自信が持てない(自尊心が低い)子の場合、他の部分で自信を持つ機会を得ることが非常に大切です。家の中の手伝いは、自尊心が低い子の自尊心を高めるチャンスとして活用できる可能性があります。

 

3. 家の外でお金を稼ぐ力の土台となる

子どもはいつか大人になり、自分で稼いで生活していく時期が来ます。そのような将来を見越したときに、家事で行うためのスキルは家の外での仕事を行うための土台となってくれるでしょう。掃除や炊事はそれだけでもアルバイトでお金を稼ぐためのスキルになります。「やったことがある」という自信は新しい環境に入っていく際の心の支えになります。

 

参考

年齢や個人差に応じて、お手伝いをする際に大人が一工夫してあげることが必要になるかもしれません。一工夫の参考例として以下の記事をどうぞ。(3才位の子にはお小遣いよりも、小さいお菓子のごほうびの方が効果的です。)

 

 

▼歩合制お小遣いを使った「学び」

どのような活動を学びの活動と見なすのかについて強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話が参考になります。「学び」と表現したのは、いわゆる学校の勉強(机の前に座り、教科書を開く)以外にも学び方はいろいろとあるからです。学びと歩合制お小遣いを関連させる方法については、ボリュームが多くなりすぎてしまうので今回は割愛します。またの機会に。

  

 

▼心の栄養との関連

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ここで親から子どもに供給する心の栄養について触れます。(心の栄養について詳しくは、子どもが生まれてから自立するまで使える子育てメタ理論とは?を参照ください)

適度な制限の栄養

大人から子どもに与える心の栄養との関連について述べておきます。あなた自身が子どもに対してどの程度、この栄養を充足させることができているかは、チェックリスト「SPQ_excel_ver.xlsx」の赤の4番5番のスコアで確認することができます。

この栄養が充足されると子どもの無意識の思考には「面白くないことでも、自分のためになることなら基本的にやることができる。」が生じます(8才以降)。逆にこの栄養が不足すると子どもの無意識の思考には「自分のためになると知っていても,面白くないことはどうしてもできない。」が生じます(同じく8才以降)。

家事も勉強にも共通して必要なのは「将来の利益のために、今やりたいことをガマンする」という能力です。この能力を身につけるための手助けとして、歩合制お小遣いという方法は役に立ちます。

もしこの能力が十分に育たない場合、子どもはものごとをやり遂げることが難しくなってしまいます。子どものうちであれば、勉強に手がつかないことが多く成績が振るわないという様子として現れるかもしれません。大人になったときには、仕事が長続きしない傾向があるかもしれません。

 

つながりと受容の栄養

この栄養を充足させることができているかは、チェックリスト「SPQ_excel_ver.xlsx」の緑の1番のスコアで確認することができます。

歩合制お小遣いを利用することによって結果的に、親が子に対して批判を用いないでいられることも重要な点です。批判の例としては、親が期待することを子どもがしなかったときに、子どもに対して「ちゃんとやりなさい」「やる気を出しなさい」などと言うやり方があります(専門的には負の強化)。

また、やらない(あるいは、できない)ことの原因がやる気以外にある場合、批判はまったく効果がありません。それどころか批判は親子関係を非常に悪化させていく恐れが高いでしょう。

批判を過度に用いた子育てを行った場合、子どもには「自分には価値がない」という無意識の思考が生じやすくなります(8才以降)。逆に批判ではなく報酬(お小遣いや褒めること)を用いて子育てを行った場合、子どもには「自分には人としての価値がある」という無意識の思考が生じやすくなります(同じく8才以降)。

「自分には価値がない」という無意識の思考を持ったまま大人になった場合、ストレスに弱かったりうつ病のリスクが高くなることが研究から分かっています。

 

 

注意点:歩合制お小遣いで解決できないこと

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歩合制お小遣いを用いてできることはモチベーションの上乗せをすることです。裏を返すとモチベーションを上乗せする以外のことはできません。またいくらお小遣いをあげたって、どんなことでもやるわけではありません(大人だって「お金もらっても、今それをやる気にはなれないなぁ」と感じる状況があります。それと同じことです)。

人が何かをできるようになるためには、知識、スキル、モチベーションの3要素が全てそろうことが必要になります。決して、やる気だけですべてが可能になるわけではありません。ですから子どもが何かにつまずきがある場合には歩合制お小遣いでやる気を刺激するだけでなく、必要な知識やスキルを身につけるための手助けをする必要が生じるでしょう。

※知識やスキルを補うための手助けの方法については子どもを依存的にしない手助けの方法:フェイドアウトが参考になります。

 

 

まとめ 

  • どうせお小遣いをあげるのであれば、教育的効果が期待できる歩合制お小遣いを利用してみましょう。
  • 歩合制お小遣いを上手に利用しながら、子どもにとって必要な学びの機会(お手伝い、勉強など)を設定しましょう。
  • はじめはお金を目的に行動しますが、継続することによって徐々に自発性が生まれるようになっていきます(外発的動機付けから内発的動機付けに移行します)。