アスペルガー症候群の子どもの抑うつ、気質、その他の特徴との関係
論文の原題:Depression, Temperament and their Relationship to Other Characteristics in Children with Asperger's Disorder
要約の意訳
この調査は、アスペルガー症候群の小学生や十代の子どもと抑うつの関係や特徴について調べるものです。データとして利用したのは、アスペルガー症候群の症状、気質、全体的な精神状態、ソーシャルスキル、障害の自覚、性別、抑うつ症状に関する親と子ども自身のレポートです。質問紙でこれらについてアセスメントして、その結果を子どもの家族に送付しました。いくつかの発見がありました。
①予想していた通り、アスペルガー症候群の程度が強いほど、気分は落ち込んでいるようでした。そしてソーシャルスキルを身につけているほど、抑うつの症状は軽いと親が報告していることがわかりました。
②これも予想していた通り、障害の自覚をしているほど抑うつの程度が強いことが親から報告されました。
③22人中13人の子どもの抑うつの症状は、セルフリポートよりも親によるリポートの方で高い抑うつ傾向を示していることがわかりました。これは特に男子に多いようです。
このような結果から分かったことは、アスペルガー症候群の子どもが訴えることが多い気分の落ち込みと、彼らの有する特徴(気質、ソーシャルスキル、認知機能)とに何か関係がありそうだということです。
※自閉症スペクトラム障害(ASD)には似ている表現が多数あります。自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害などがあります。
▼荒川コメント
ソーシャルスキルを身につける程度によって抑うつの程度が変わるという結果でした。子どもの10年後を見据えて、今の支援を計画していくことがとても大切なことだと言えるでしょう。
アスペルガー症候群の抑うつ症状に関する研究は数多くなされているようです。杉山登志郎先生の「発達障害のいま」にも抑うつを示すアスペルガー症候群の人々の事例が紹介されています。