ADHDの症状を改善するトレーニング
原題:Training of Working Memory in Children With ADHD
ワーキング・メモリは、短い時間の間に情報を覚えたり操作する能力のことです。ワーキング・メモリは人によって個人差が大きいです。ADHD(注意欠陥多動性障害)の子どもは脳の前頭葉に障害があり、このワーキング・メモリの力が弱いようです。そこでこの調査では、ワーキング・メモリのトレーニングがどのような効果をもたらすのかについて調べます。
トレーニングによって、ワーキング・メモリの力が明らかに高まることがわかりました。さらに重要なのは、このトレーニングの中で練習することがなかった問題(空間認知課題とRaven's Progressive Matrices)の成績も上がったということです。また、頭を動かすという落ち着きのない行動も減少しました。このトレーニングは、ADHDではない若い成人でもワーキング・メモリの力を高める効果がありました。
この調査から分かったことは、ワーキング・メモリのトレーニングによって明らかに改善される面があることと、ワーキング・メモリが関連する他の能力にも効果があることです。このトレーニングによって、前頭葉の機能が改善し、ADHDの子どもの落ち着きのなさが減少しました。今後、ADHDの治療方法として用いられる可能性があるでしょう。
※ダブルブラインドデザインで、プラセボ効果の測定も行っています。
▼荒川コメント
現在利用できるワーキング・メモリのトレーニングを行っている団体にCOGMEDというものがあります。このトレーニング・プログラムは、パソコンにソフトをインストールして1日数十分程度のトレーニングを十数回行うようです。価格は7万円程度。もう少しワーキング・メモリに関する調査を探して、この7万円が高いのか安いのか判断できる材料を見つけたいと思います。