体罰が虐待にエスカレートしやすいことをふまえて、虐待と非行の関係を知ろう

虐待を受ける子どもは非行は犯罪を犯す傾向が高いことが知られています。最初は体罰だったものがエスカレートして虐待に発展しやすいことをふまえて、虐待を受けた子どもの犯罪率について知りましょう。
調査に協力してくれたのは、虐待を受けた経験のある5〜21歳の574人です。その結果、次のようなことがわかりました。
5歳までの間に身体的虐待を受けた人は、暴行や違法行為によって警察に逮捕されるケースが特に多いようです。
さらに、身体的虐待を受けた十代の子どもは高校を卒業しておらず、仕事をクビになる傾向が高いようです。
十代で子どもを持つ、結婚していない状態で妊娠する/させる傾向も高いようです。
抄訳した論文の原題:Early Physical Abuse and Later Violent Delinquency: A Prospective Longitudinal Study
▼虐待と体罰はどう違うのか?
体罰と虐待はどのように区別されているのか確認しましょう。
- 体罰:平手でたたく、細い棒のうようなものでたたく
- 虐待:殴る、やけどさせる、ける、尻以外の部位を物でたたく
参考:Speak Softly—and Forget the Stick: Corporal Punishment and Child Physical Abuse
次のような過程で体罰が虐待にエスカレートしていくと言われています。
①最初、親は子どもをあまり強くは叩かない。
②叩かれることが繰り返されることで子どもの攻撃性や不安定さが高まる。そのため徐々に、叩いても子どもが親の言うことを聞かなくなってくる。このときに親はイライラして叩く強さが増していく。
③たたく強さが増したことでしばらくは子どもが親の言うことを聞くようになる。しかしたたく強さが増したことで、さらに子どもの攻撃性や不安定さが高まり、叩いても効果が見えにくくなってくる。
④さらに叩く強度が強くなる。
このようにして①〜④の悪循環が繰り返されていくことになります。
▼体罰が子どもに長期的に及ぼす悪影響
攻撃性の増加:受ける体罰や虐待の強度が強まるほど、子どもが犯罪を犯す傾向が強まることが分かっています。 また将来、自分のパートナーや子どもに対して暴力を振るう危険性が高まります。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)の危険性:体罰や虐待は心的外傷体験になります。心的外傷体験にさらされることによって、、眠れなくなる、突然恐怖に襲われる(フラッシュバック)、怒りが抑えられなくなる、などの症状があらわれます。
アルコール依存症の危険性:思春期以降に起こる問題に、アルコール依存症があります。アルコール依存症は仕事や学校生活ができなくなってしまう深刻な症状です。重症になってくると犯罪や死の危険性もあります。
▼体罰をしている親も恵まれない子どもだった
体罰をしてしまうことによって、親も罪悪感を感じるものです。ですがやめることができません。親が自分自身も体罰を受けて育ってきている不幸なケースもあります。
体罰をしてしまっている自分に対して困ってしまっている親御さんは保健所などに相談して、子どもとの接し方について相談してみましょう。例えば「子育てのやり方に不安があるから教えてほしい」と相談することもできるでしょう。相談したり支援を受けることによって体罰をしないで子育てができるようになっていくはずです。
子育ての具体的な方法も紹介しています。幼稚園以上の年齢であれば「ADHDの子の教育に不可欠なポイントカード(トークンエコノミー)の使い方」や「ADHDの子の教育に不可欠なタイムアウトの実演動画」が参考になると思います。ADHD(注意欠陥多動性障害)の子どもでなくとも有効な方法です。
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