チェックリストで分かる自分の子育てのクセとは?

前回の子育てメタ理論の記事では、親が子に心の栄養をバランスよく与えることの重要性について説明しました。今回は、実際に子育てメタ理論のチェックリストを使って自分の子育ての状態について客観的に把握し、今後どのようにするといいのかについて考えてみましょう。
チェックリストの説明
SPQ_excel_ver.xlsx(許可なき改変及び再配布禁止)
※ダウンロードしてエクセルのアプリケーションから開いてください。
リンク先のエクセルファイルを開くと、子どもに心の栄養を与えられているかどうかを調べるための質問項目が表示されます。
質問項目には番号が振られており、番号の欄が緑、黄色、赤、で色分けされています。この色は心の栄養の種類を表しており、緑=つながりと受容、黄色=健全な自立性と行動、赤=適度な制限、を表しています。(それぞれの用語の意味については↓
子どもが生まれてから自立するまで使える子育てメタ理論とは?)
このチェックリストを用いて、ご自分が子どもに接する際にどの栄養に偏りがあるのか確認してみてください。偏りがある場合には、個別の改善案が記されていますのでそちらも参考にしてみてください(ただし、改善案の具体例は子どもが幼児〜小学校低学年向けになっています。それ以上の年齢に対する改善案ついては開発中)。
「うれしい9割、かなしい1割」とは?
チェックリストの中には【「得意でない」場合、こうしてみましょう】という項目があります。その中にある「うれしい9割、かなしい1割」という方法のやり方について説明します。
「うれしい9割、かなしい1割」というやり方は、子どもに対して肯定的な態度や言葉を表すことが難しいと感じている親御さんに対して勧めているやり方の一つです。
このやり方では、子どもが「これからも続けてほしい行動」※1「試行錯誤の行動」※2をしたときには
「○○がそれをできる(やろうとする)のは、パパはうれしいねぇ( ´_ゝ`)」
と伝えます。(※1〜2の用語について詳しくは以下を参照↓
子どもが生まれてから自立するまで使える子育てメタ理論とは?)
人間には、他の誰かが喜ぶことで自分もうれしくなるという心の働きが備わっているようです。子どもも例外ではありません。この性質を上手に使ったのが「うれしい」と伝えるやり方です。
また、子どもが「度が過ぎる行動」※3をした場合に
「○○がそんなことしたら、パパはかなしいよ(´・ω・`)」
と伝えます。
人間には、他の誰かを悲しませると自分も悲しくなるという心の働きが備わっているようです。この性質を上手に使ったのが「かなしい」と伝えるやり方です。
(※3の用語について詳しくは以下を参照↓
子どもが生まれてから自立するまで使える子育てメタ理論とは?)
注:割合は目安です
そしてうれしいやかなしいを伝える割合は、うれしいが9割、かなしいが1割くらいを目指そうという意味があります(厳密にこの割合である必要はありません。努力目標と考えてください)。もし日頃子どもを叱ることが多いと感じる方は、まずはうれしいと伝えられることを探すことから始めましょう。そして何日も掛けながら一つずつ、うれしいと伝えられる回数を増やしていくつもりでいましょう。
もしうれしいと伝えられることがない場合には、当たり前すぎて見過ごしていることがないかどうか考えてみましょう。
当たり前はうれしいこと
ここで、当たり前のことの大切さについて例を出しながら考えてみます。
例えば、毎日家事をやっているのに「当たり前だから」という理由で家族の誰からも感謝の言葉を掛けてもらえないお母さんがどんな気持ちでいるのか考えてみましょう。そしてもし、そのお母さんが子どもから「ごはん おいしいね ありがとう ママ」と言われたらどれだけうれしいと感じるか想像してみましょう。
例をもう一つ。東日本大震災が起こった当初、それまで「当たり前」と考えていたものが失われた時に、どれほど当たり前のことがありがたいことだと感じたのか思い出してみましょう。
このように考えてみた場合に、子どもが当たり前にしていることがどれだけうれしいことなのか改めて考えることができるようになるはずです。
当たり前のことだからできて当然だし、ありがたみがないのではありません。当たり前のことだからこそ、とてもありがたいし、うれしいのです。
どうしてもうれしいことが見つからないなら、子どもが外から帰ってきたときにこう言いましょう。
「○○が元気に帰ってきてくれて、うれしいわぁ♪(´ε` )」
親の心子知らず。だから伝えよう。
「うれしい9割、かなしい1割」の方法がどのように働くのかについて説明します。この方法の利点は、他者(親)がどんなときにどんな気持ちになるのか子どもが知るチャンスになるというものです。子どもは本当に、親が何を考えたり喜んでいるのか知らないものです。
我が家にはこんなエピソードがあります。私がこの「うれしい9割、かなしい1割」の方法を使い始めてすぐの時に、私と長男4才の間にこんなやり取りが起こりました。着替えが面倒でやりたくない長男が、なんとか自分で着替えたときのことです。
父「わぉ、○○が自分で着替えができるようになると、おとうさんはうれしいよ」
子「え?!おとうさんて、こんなことがうれしいの?」
そしてこれを機に、長男がそれまでよりも私に対してなつく度合いが増えました。どういうわけか彼の心の中で、私に対するつながりを感じる度合いが強まったようです。
他者が何に対してどんな感情を持つか推測する能力は、実はかなり難易度が高いものなのです。だからこそ、このようなやり方で親自身がどんな気持ちになるのか伝えていくことが「他者の気持ちがわかるようになる」ために効果があります。
参考:親の子育ての仕方がうまくいっているかどうかをさらに詳細に確かめる方法
親の子育てのやり方が子どもにとってどのようなものであるのかをより詳細に確認するための方法があります。その方法とは、子どもに対して心の栄養の充足度を確かめるチェックリストを行うというものです。
そのチェックリストは実際にスキーマ療法を行う際に用いられるもので、低年齢向け(8〜13歳向け)と大人向け(14歳以上と大人)があります。親から子どもへの接し方と、子どもの無意識の思考を定期的に確認することによって、心の栄養のバランスを崩していないかについて知ることができるようになります(今回のエクセルファイルには含まれていません)。残念ながら7才以下の子どもは、チェックリストの質問の内容を理解することや、自分自身の考えを把握する点でまだまだ難しい年齢ですので確認できません。
このようにして、親の栄養の与え方の確認と、子どもの栄養の充足を両方確かめることによって、より詳細に子どもの心の栄養の状態を把握することができるようになると仮定しています。
このような方法を用いることによって、親子関係における過ちに気付きやすくなり、親子関係の見直しをしやすくなります。
まとめ
- 自分の子育てのやり方を客観的に確かめ、具体的な改善案を見つけるのにチェックリストが役に立ちます。↓
SPQ_excel_ver.xlsx(許可なき改変及び再配布禁止) - 改善案の一例として「うれしい9割、かなしい1割」という方法があります。
- 今秋頃に、子育てメタ理論のエビデンス(実証性)をより確かなものにするための調査費用70万円をクラウドファンディングで調達する予定です。その際はご協力お願い致します。
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