ゲームと犯罪と子どもたち:ゲームに関する疑問アレコレについてリサーチ中
中高生の子の対応をしている中で、スマホやゲームとのつきあい方について考えさせられることが多くあります。また、ときどき耳にする「ゲームをやると攻撃的になる」「ゲーム依存」「ネトゲ廃人(ネットゲームをやり過ぎて廃人状態になった人)」などのワードも気になります。本当のところどんな実態があるのか確認してみましょう。
どんな人がゲーム依存になりやすいのか?
結論から言うと、日頃、生活の中でストレスや不安に感じる状況(家庭環境、学校生活)が多い人がゲーム依存になりやすいことが分かっています。また、過去に家庭環境や学校生槓子で困難を抱えていた大人もゲーム依存になりやすいことが分かっています。嫌なことを忘れるためにゲームをやり、日頃の生活で自己肯定できない分をゲームに打ち込んで補うという流れでハマっていくようです。他には、ゲームを無制限にできる環境があることもリスク要因になります。
ゲームとの関連が指摘されている事件など
ゲームとの関連が指摘されている事件はいろいろとあります。例えば、1999年にアメリカのコロンバイン高校で2人の高校生によって行われた銃乱射事件では、自殺した二人の高校生がゲームにはまっていたとされています。また2002年に、韓国では86時間連続でゲームをやって死亡した男性がニュースになりました。
ゲームをやると攻撃性が高まるのか?
「ゲームと犯罪と子どもたち」によると、ゲームによって攻撃性が高まることはない、と結論付けられています。その根拠となっているのは、ゲームをやることと、現実の場面で暴力を振るうこととには統計的にも意味のある関連が見られないため、ということです。
これに対する一般的な反論としては、「でも、ニュースでたくさん報道されてるでしょ」というものがあります。ここで考える必要があるのは、ニュースとはそもそも「珍しいことを扱うもの」だという点です。珍しいことを、印象的に、たくさん伝える、のがニュースというものです。したがって、「ニュースでたくさん見た」ということと「実際にそのような事件がたくさんある」ということとはあまり関係がない場合があります。
本当にゲームが犯罪や事件を発生させるのであれば、もっと多くの事件が発生しているはずです。ゲームをやっている人は世界で数千万〜数億人はいるはずですが、ゲームが直接の原因というケースは報道されていません。
コロンバイン高校銃乱射事件ではゲームが問題視されたようです。しかし、それよりも大きな問題として、家庭環境の問題や学校での居場所のなさといったその他の問題もあるなかで、それぞれの要因がどの程度、どのような影響を持っているのかを考える必要があります。ゲームに全部の責任を負わせて、本当の問題が見えなくなってしまっては、同じ問題が繰り返されることにもなってしまいます。
ゲームをやると、現実と仮想の区別がつかなくなるのか?
これについては「ゲームと犯罪と子どもたち」の中で、著者が面白い調査をしています。実際にゲームをやっている子どもたちに対して、ゲームと現実の区別がつかなくなるか尋ねることを行いました。
オースティンは、朝起きたらグランド・セフト・オート・バイスシティのトミー・ベルセッティになっていたところを空想して楽しんでいた。「彼は人を殺すんだけど、それがおもしろそうなんだ」というのが、その理由らしい。1日だけトミーになったら、オースティンは「人を殺すよ。誰でも良いから、道を歩いている人を殺すんだ」という。しかし、人殺しのどこがおもしろいのかを聞かれると、一瞬考えてから「現実の世界ではおもしろいとは思えないな」と答えた。
他の子どもたちも同じような発言をした。
パトリック「(『グランド・セフト・オート』について)ああいうことをするのは、なんだか怖い気がするよ。誰かを打って、その人が死んだら、長い間刑務所に入らなきゃならないだろ。だからそんなことはしたくないんだ」
バリー「殺し屋のやってることとか、みんなかっこよく見えるけど、現実の世界では、あんな生き方したくないな。(『グランド・セフト・オート』では)車から降りて行って、誰かを殺すのも気にならないよ。それでトラブルに成ることはないし、ゲームを終了すればそれでおしまいだからね。でも、そんなにああいう人に憧れたりはしないよ」
一方で、確かに中国の天津で少年が「魔獣争覇」ゲームの登場人物をマネて、「この世を離れ、転生する」と遺書を残して飛び降り自殺をしたケースがあります。
中国、天津では、こんな奇妙な少年の自殺も起こっている。36時間ネットゲームを遊び続けた13歳の少年が「自分が尊敬し、崇めているのはゲームに登場する人物で、死をもってこれらの英雄たちを探し続ける」としたためた遺書を残し、人気ネットゲーム「魔獣争覇」の主人公をまねて、芦を組み、両手を伸ばしたかっこうのままビルの24回から飛び降りた。遺書には「この世を離れ、転成する」と書かれてあったという。
このくらい極端な例になると、確かに現実と仮想の区別が付いていない様に見えるのですが、そこまでいってしまうとなんらかの精神障害があったのではとも思えます。精神障害があるということは家庭や学校で非常に大きなストレスをためていることが示唆されるので、ゲームそのものよりも大元のストレス源が何なのかをたどっていく必要があるように思えます。
まとめ
ということで、親として何を考える必要があるかというと、
①子どもにとってストレスとなることを減らす:家庭環境を良好で安定的に保つ、子どもの自発性を基本的に尊重する、など
②ゲームをやる時間を適切に制限する:時間帯やプレイ時間を決めて楽しむようにする(我が家では基本的に、夜のお風呂の後の30〜60分程度)
ということが大枠になると思います。すでに大人で、ハマって抜けられない人は、専門医に相談するという対応があるようです。
関連記事
- 発達性協調運動障害を知っていると運動神経悪い芸人を笑って良いものかどうか分からなくなる件
- 「親に言ったら殴る」と口止めとして脅されたときのためのシミュレーション:自分がカツアゲされた時を振り返ってみつつ
- 子どもの約束力を育てるために、親は日頃から約束の先払い・後払いに注目すべし